-恐怖夜話-

「な……に、これ?」


上がる息の下、私はやっとのことで声を絞り出した。


むっとする刺激臭が、あたり一面に漂っている。


沙希の家の前。


目に飛び込んできた光景に、私は思わずその場で棒立ちになってしまっていた。


そこに有るはずの、沙希の実家が無かったのだ。


いや、あるにはあるのだが、それは最早家とは言えないだろう。


焼け崩れて、黒い燃えかすとなった家の残骸が積み重なっている。


私は、敷地の中に視線を巡らせた。


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