-恐怖夜話-

見覚えのある植木、庭石、倉庫。


そして、手入れの行き届いた美しい花壇。


その花壇の中で、大輪の向日葵が、夏の日差しを浴びて咲き誇っている。


その向日葵の間を、何かがチラチラ動いているのが見えた。


黄色い、麦わら帽子。


赤いリボンが風に吹かれて、向日葵の葉と一緒にユラユラ揺れている。


白いワンピースの……女の子?


クスクス。


え?


その笑い声に、聞き覚えがあった。


夢だ。


夢の中の子供の笑い声。


「香織!」


「きゃっ!?」


不意に背後から声を掛けられ、私は文字通り飛び上がった。


慌てて後ろを振り返ると、私と同じに驚いた顔をしている東悟が立っていた。


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