-恐怖夜話-
人気の無い、ローカル線の無人駅で電車を降りたのは、私ひとり。
つい、と上げた視線の先には、月のない闇夜にぼんやりと浮かび上がる古びた駅舎が、人気の無さを際だたせている。
こんな時間に、ここに降りたのは始めてだった。
まあ、電車自体に乗客が居ないのだから、降りる客も居るわけはない。
分かってはいたけど、頭で理解しているのと実際この目で見るのとでは、かなり違う。
そう、何というか、『不気味度』が違うのだ――。
「もう、最低っ……」
心細さをうち消そうと、わざと声に出して呟いた。
その息が白い。
ジンと染み込むような冷気に、ぶるっと身震いをして、コートの襟をかき寄せる。