-恐怖夜話-


「本当よ! こんな事で嘘なんかつかないよっ。 ほら見てよ。これが証拠よ、証拠!」


私は、右手の人差し指と中指に巻いた絆創膏を引っぺがして、傷口がよく見えるように、手のひらを母の鼻先に突き付けた。


斜めに走った引っ掻き傷。


そう、これは引っ掻き傷だ。


私はこの傷を見たとき、『何かに引っ掛けた』と思った。


でも、これは、引っ掻かれた傷だ。


あの小さな白い指。


今朝、『アレ』に、引っ掻かれたのだと悟った時には、思わず傷口に塩でも擦り込んでお清めしたくなってしまった。


さすがに痛そうだから、マキロンで念入りに消毒するだけに留めたけど。


霊感皆無で今までご縁が無かった分、ショック百倍なんだから。

< 49 / 358 >

この作品をシェア

pagetop