-恐怖夜話-
いつもなら遅くても、夜8時には帰宅していた。
別に私が真面目一辺倒な訳ではなく、土地柄、夜の女性の一人歩きがタブー視されていたのだ。
駅の周りは畑と雑木林で囲まれていて、視界が通りにくい。
俗に言う『痴漢多発地帯』で、駅のそこここには『痴漢注意!』の立て看板がうるさいくらいに立っている。
「どうしようかな……」
――家に電話して、兄さんに車で迎えに来てもらおうか?
でも、明日の仕事が早番だったら、もう寝てるしなぁ……。
私は、家へと続く、真っ暗な細い砂利敷きの道路を眺めながら、家に電話をするかどうか迷った。