-恐怖夜話-


車の代行業を始めて、半年。


夜の車の運転にも大分慣れたなと思いつつ、俺、田口勝(たぐちまさる)は快調に車を走らせていた。


遠方の客を家まで送り届けた帰り道。


田舎の一本道には対向車も無く、月の光が黒々とした山陰を浮かび上がらせている。


薄気味悪い夜だな。


狐か狸にでも化かされそうだ……。


俺は心のなかで一人ごちると胸ポケットをまさぐり、片手で煙草を一本取り出して口にくわえた。

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