-恐怖夜話-
たまに、質(たち)の悪い酔っぱらいに当たって手こずる事はあっても、営業で胃薬を飲みながら接待浸けの毎日を送っていた事を思えば、何でもない。
カチッ。
考えに沈んでいた俺は、シガーライターの鳴る音に、はっと我に返った。
危ない危ない。
いくら空いた道でも、油断は禁物。
夜道を飛ばして走る代行業者が起こす事故は大きくなりがちで、悲惨な死亡事故も少なく無かった。
俺は、背筋をぐっと伸ばして、前方に意識を集中した。
しばらく行くと、前方数10メートルほど先、道路の左端にジュースの自動販売機が立っているのが視界に入る。
そう言えば、喉が渇いたな……。
急に、何か飲みたい衝動に駆られた俺は、バックミラーで後続車がいないのを確認して、自販機の前にすっと車を止めた。