-恐怖夜話-
「おい、坂崎。自販機があるけど、何か飲むか?」
一応、声を掛けてみたが、熟睡してしまったのか、坂崎は相変わらず高いびきで眠っている。
まあ、いいか。
俺は、ズボンのポケットに小銭が入ってるのを確認して、車の外に出た。
ヒヤリ――。
暖かい車内から出た途端に、ぞくぞくっと寒さが背筋を這い上がってくる。
「うわっ、こりゃ寒っ……」
呟いた息が、白い。
路肩の土には霜柱が立っていて、歩くたびに『ざくっざくっ』と音が上がった。
こりゃあやっぱり、ホットコーヒーにするかな。
そんなことを考えながら、自動販売機の前に立って百円玉を投入口に入れようとしたその時。
こつ、こつ、こつ――と、
左側から、靴音が聞こえた。