-恐怖夜話-

ぼんやりとして良く見えないが、白っぽいOL風のスーツを着て、ハイヒールを履いた女。そのシルエットだけが、闇に浮かび上がった。


ゆっくりと、俺の方へ歩いて来る。


「……な、何だぁ? こんな真夜中に、こんな人気の無い農道を、何でOLが歩いてるんだ?」


喉元に引っかかった言葉が、掠れて口からこぼれ落ちる。


あまりにも非常識なその光景に、俺は、ジュースを買うのも忘れてその光景に見入ってしまった。


近付いてくる。


徐々に女が、近づいてくる。


ゴクリ――。


唾を飲み込む音が、シンとした闇夜にやけに大きく響いた。
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