-恐怖夜話-
「田口さん! 田口さんっ!」
「え?」
「スピードを落として! もう大丈夫ですよっ!」
「あ、ああ……」
坂崎の声に我に返った俺は、出過ぎているスピードにハッとして、踏み込んでいたアクセルをゆっくりと戻した。
もう、バックミラーには、自販機は見えない。
対向車とすれ違い、人家がちらほらと視界に入る。
そこにあるのは、当たり前の日常。
助かった……。
その時、やっと俺は、ずっと止めていた息を大きく吐き出した。