-恐怖夜話-
「なあ、坂崎。さっきの、あれ……見たか?」
「ええ……」
コクコクと頷きながら薄気味悪そうに答える坂崎の表情を、バックミラー越しにチラリと見やる。
「いったい何なんだ、あの女は……」
「女? 女に見えたんですか!?」
俺の呟きに、坂崎は驚いたように目を丸めた。
「ああ、白いスーツを着た若いOL風の女だった。髪の色までくっきりと見えたよ……」
「俺には、白っぽい影のようにしか見えなかったんですけど……」
「けど?」
「白いハイヒール。それだけがやけにはっきり見えたんですよ……」
思い出したように坂崎が『ぶるっ』と、身を震わせた。