-恐怖夜話-
「でも、あんな所で何をしてたんすか?」
「えっ? 何って、喉が渇いたから、自販機でジュースでも買おうと思って……」
「……田口さん」
顔色をなくした坂崎は言いにくそうに口ごもった後、身をすくめながら絞り出すように言葉を続けた。
「さっき、田口さんが立っていた所に自販機なんか無かったですよ」
「えっ……?」
自販機が、ない?
坂崎の言葉に、背筋を薄氷が滑り落ちる。
自販機じゃなければ、いったい『何が在った』と言うんだ?
「あそこに立っていたのは……」
立っていたのは?
「お地蔵様です……」