僕が彼女を殺しました・・・。
◆第1章
家族
俺の家族は、どこにでも居るような
ごく普通の家族だった。
特にお金持ちな訳でもなければ、
貧乏な訳でもない。
本当に普通の家族。
普通だったけれど、
俺は幸せだった。
父さんは、家庭を大事にするいい父親だった。
俺が小さかった頃はよく遊んでくれたし、
いろんなところに連れて行ってくれた。
いい父親だったけど、
よく人に頭を下げていたのを覚えてる。
その姿は、俺にとって格好悪い姿だった。
だから、1度だけ父さんに言ったことがある。
「父さん、何でそんなに謝るんだよ!すぐに頭なんか下げるなよ!」
「男のプライドは無いのかよ!!」
こう言った時、父さんの顔はすごく悲しそうだった。
その表情を見て、俺は少し戸惑ってしまった。
「何でそんな顔するんだよ・・・。」
「浩一、ごめんな。こんな格好悪い父さんで。」
「でもな、頭を下げることなんて、全然苦しくないんだよ。」
父さんが俺の肩を掴んで、まっすぐ俺を見る。
「父さんが頭下げるだけで、何かが良くなるんだったら、男のプライドなんて簡単に捨てられるんだよ。どうしてか分かるか?」
「分かんないよ・・・。」
「父さんには、守りたいものがあるからだよ。」
「守りたいものって何?」
「それは、お前だよ。」
「え?」
「お前や、母さんや、千里。家族みんなだよ。」
父さんは、すごく優しい表情で言った。
俺はすごく嬉しかった。
「浩一、お前も大きくなったら、きっと守りたいものが見つかるだろう。」
「その守りたいものの為なら、お前は何でもしないといけない。」
「分かったか?浩一。」
「うん。俺も父さんみたいに、強くなるよ。」