僕が彼女を殺しました・・・。
「さ、入って入って。」


部屋の中は、思ったよりも広かった。

一通り部屋の中を見て周る。


「どうだ?気に入ったか?」

「はい。いいところだと思います。」

「いや~、良かったよ。ちょっと古ぼけてて、若い人は嫌かと思ったけど、気に入ってもらえて。」

「いろいろありがとうございます。」

「もう聞き飽きたから。その言葉は。」


でも、何度言っても足りないくらい
おっさんには感謝してるよ。

って言おうと思ったけど、

何か悔しいから言わなかった。






「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。本当は片付けを手伝ってやりたいんだが・・・仕事は仕事だからなぁ。悪いな。」

「そんな・・いいですよ。おっさんにやらせたら、もっと面倒な事になりそうだし。」

「何だぁ~!?」

「早く仕事に戻った方がいいんじゃないですか?」

「はいはい。邪魔者は消えますよ~。」


そう言っておっさんは、
背中を向けたまま手を振って玄関へと向かっていく。


「おっさん、ありがと。」


おっさんは何も言わなかった。
聞こえてないわけじゃない。

ただ、

もうその言葉は聞き飽きたんだろう。

きっと背中の向こうにあるおっさんの顔は、
笑っていたと思う。












「んじゃ、片付けすっかな。」


一つずつダンボールを開けていく。


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