恋*クル〜2nd〜
それからのあたしの素早い行動に、武人はさらに驚いた。
夏休みのあいだ、武人のアパートに泊まりこむという話が成立した直後。
あたしはすぐさま武人を引き連れて自分のアパートに戻り、身の回りの物をダンボール箱に詰め込んだ。
「ほら、早く運んで!」
「……梓ちゃん。引っ越しみたいだよ」
引っ越しさながらの準備に、武人はそうボヤきつつダンボール箱を運び始めていく。
ダンボール箱に洋服や下着を詰め込みながら、あたしは呪文のように心のなかで呟く。
この夏休みじゅうに、武人との関係を一歩、前に進ませるんだ。
市橋くんとは、何もなかったんだ。
あたしの部屋から運び出されたダンボール箱は、たったの三箱。
あんなに張り切っていたくせに、意外にも持っていく荷物は少なかった。