恋*クル〜2nd〜
梓の部屋はアパートの二階の角にある。
会いに行く時はいつも、階段を一段飛ばしで軽快に上っていくのに……。
こんなに時間をかけて、ゆっくりと上るのは今日が初めてだ。
【EDA】
インターホンの真上にかけられた木目の表札。
引っ越して来たその日に、俺とおそろいで買ったヤツ。
“表札なんかいらないって”
梓は口を尖らせて反抗していたけれど、その口調はどこか嬉しそうだったのを覚えている。
何度かためらったあとに、インターホンのボタンをゆっくりと押す。
直後、ドアスコープから自分の姿を見られないように、反射的に身を隠した。
――……なに、やってんだろう。