恋*クル〜2nd〜
*武人 side②*
俺を部屋に通した梓は、そのままキッチンに向かい、コーヒーを淹れる準備を始めた。
でも、悠長にコーヒーを飲んでいられるような状況じゃない。
「……何もいらないから」
俺が断ると、梓は唇をキュッと固く閉じたまま、こちらにやって来た。
いつもはソファに並んで座るのに。
俺はソファ、梓は床の上。
この微妙な距離感に、胸がチクチクと痛み出す。
「市橋くんとのこと……、本当に……ごめん」
謝っているのに。
今にも泣き出しそうな顔を見て、許すべきだと一瞬思ったのに。
市橋の名前が出たとたんに、呼吸するのを止めたくなるくらいに絶望してしまう。