恋*クル〜2nd〜
記憶がない、同意の上ではなかった。
それが唯一の救いになるであろう事実なのに。
“市橋と関係を持ってしまった”
その現実は、どんなに弁解しても消し去ることなんかできない。
「しばらく、距離を置こう」
そう言うと、梓の瞳から涙が溢れ出した。
泣き出した梓を前に、胸が痛くなる。
……でも、許せない。腹が立つ。
事情がどうであれ、一度きりの浮気を“もうするなよ”なんて言えるほど、俺は寛大な男じゃないんだ。
「……じゃあな」
うなだれるように俯いている梓を残して、俺は部屋を後にした。