恋*クル〜2nd〜
自分の席に戻るように促すあたしの言葉なんか、武人の耳には届いていない。
武人は眉間に皺を寄せ、席に座ったまま市橋くんを睨んでいる。
市橋くんは、武人の怒りなんか全く気にもしていない様子で、笑みを保ったまま言葉を続けた。
「俺さ、江田とやり直そうかなーって思ってるんだけど」
「は……っ?」
おいおいおーいっっ!!
市橋くんを睨んでいた武人は、その表情のままこちらに視線を移し、あたしの出方を待っている。
「ちっ、ちちち違うってば! あたしは市橋くんとやり直そうなんて、全く思ってないしっ!」
……あたし、なに動揺してんだ?
顔の前で手を左右にブンブン振りながら否定するあたしを、武人は疑いの眼差しで見ている。