恋*クル〜2nd〜
講義のあいだ、あたしは教授の話なんか全く耳に入らなくて。
ただ、ずっと、マジメな顔して講義を聴いている武人のほうだけを見ていた。
講義が終わると同時に、あたしは市橋くんの方なんか見向きもせずに、武人のもとへと走る。
「武人、午後は講義入ってなかったよね?」
「……あぁ」
「あたしの部屋、来る?」
焦ったように誘うあたしを、武人は一度も見ようとしない。
「悪い。人と会う予定があるから」
武人は素っ気無くそう言うと、机の横に掛けていたバッグをたすきがけし、キャップを深く被る。
「……なに、怒ってるの?」
「……怒ってねぇし」
目深に被ったキャップから見える武人の表情は、誰がどう見ても怒っている。