恋*クル〜2nd〜
「ねぇ、たけ……」
「――悪いけど、急ぐから」
このまま武人を行かせたくなくて、武人のTシャツの裾をキュッと握りしめたけれど。
武人は何の迷いもなく、あたしの手を振り払って講義室を出て行ってしまった。
「あー、やべぇ。怒らせたかなぁ」
今のやりとりをすべて見ていたのか。
呆然と立ち尽くすあたしに、市橋くんは呑気な口調で声をかけてくる。
「……市橋くんさぁ、何であんなこと言うわけよ? ほんっと信じられない!」
怒りのあまり、あたしは市橋くんのスラリと伸びた足に蹴りを入れる。
「いてっ! そんな怒るなよ。言い過ぎたとは思うけどさ……。でもあいつ、なんで何も言い返さないんだよ? こっちも拍子抜けしたし」
「………」