恋*クル〜2nd〜
なぜか、帰ってほしくなくて。
あたしは咄嗟に、悦子さんのシャツを掴んだ。
「お、お茶でも……飲んでいかない?」
「えっ?」
武人のアパートなのに。
まるで自分の部屋のように言うあたし。
悦子さんは一瞬、目を丸くしたけれど、すぐににこりと笑って言う。
「……遠慮しとく。それよりさ、武人の愚痴、聞いてやってよ。ね?」
「悦子っ!」
「なに? 梓ちゃん本人と話すべきだと思うんだけど?」
話が見えない……。
悦子さんに強く言われた武人は、口をへの字に曲げて頭をぽりぽりと掻いている。
「じゃあね、梓ちゃん」
「う、うん……」
悦子さんはにこにこ笑って、潔くその場を去って行ってしまった。