恋*クル〜2nd〜


部屋に入ると、武人はそのままキッチンに行き、コーヒーを淹れ始める。


いつもならあたしは、リビングのソファにどかりと腰を下ろす。

そして、上から目線で“早くコーヒー持って来い”などと横着な口を利く。


でもこの時ばかりは……

ソファに座るどころか、床のうえにきちんと正座して、武人が来るのを待っていた。



「……ソファに座れば?」

「いえ……、このままで結構です」



武人は呆れたように溜息をつき、ゆらゆらと湯気の立つコーヒーをふたつ、テーブルの上に置いた。


床の上に正座しているあたしの目の前で、ソファにどかりと腰を下ろした武人を見て、ふと思う。



……ちょっと待て。

なんであたしだけが、下手に出てるわけよ?


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