恋*クル〜2nd〜
「……あたしには、武人しかいないから」
「……うん」
「市橋くんに、気持ちが揺れることなんか、絶対にないから」
「……うん」
大きく深呼吸をして、あたしは言う。
「武人のこと、大好きだから」
「……うん」
少し間を置いたあと、「今度は俺の番だな」と言って、武人が話し始める。
あたしを抱きしめる武人の腕は、そのままだ。
「市橋とは嫌いになって別れたわけじゃないんだろ?」
「……うん。高校受験が理由で別れたの」
「好きなのに別れたっていうのは、俺と悦子の時と同じだなぁって思ってさ」
やっぱり悦子さんとのことは、避けては通れないんだ。
さっきアパートの前で、悦子さんがあたしに見せた笑顔がフラッシュバックする。