もう一つの赤ずきん
「悪い。本当はダメだって分かってたんだ。
ただ、ずっと憧れてた。
言いたいことが言える『こっちの世界』に。
俺は言いてぇことがあっても言えないから。決まったセリフを繰り返すだけ。
……好きな奴を抱きしめることも出来ねぇんだ。」
オオカミさんのすきな人は『赤ずきんちゃん』。
私じゃなくて本物の。ただ、言えなかっただけ。
「まじで、ごめん。」
そう謝ったオオカミさんは、私の頭に手を置くようにそっと手を上げた。
「お前は、俺と違って何でも出来る。だから、俺の分まで世界を楽しんで♪(笑)」
消えていくオオカミさん。
「じゃーね。絵本で会おう♪」
空に消えて見えなくなってしまった。