もう一つの赤ずきん
もう一つの赤ずきんちゃん
━━━オオカミは言いました。
「俺は本当は赤ずきんが好きだ。でも、俺はオオカミだから……。」
うつむくオオカミに、赤ずきんちゃんは優しく言いました。
「私ね、知ってる。おばあちゃんの家に行くとき、いつもあなたが私を見守っててくれたこと。
だから私はいつも安心だったのよ?」
オオカミは赤ずきんちゃんを抱き寄せて言います。
「ずっと伝えたかった。ずっと、こうやって抱きしめたかった。」
赤ずきんちゃんの顔は真っ赤でした。
「私も…、言えるならずっと言いたかった。『大好きっ』って。」
2人は初めて自分の言葉を、気持ちを話しました。
2人を隔てた『絵本』という決まった世界はもうありません。
赤ずきんちゃんとオオカミは幸せに暮らすことができたのです。
もう一つの赤ずきんちゃんのお話━━━。