りんごあめみたいな
そんなあたしを見てますます意地悪な顔を見せる中島。
なんだか今日は中島のペースに狂った。
でもこのままやられっぱなしなのも嫌。だから言った一言。
『トマトのくせに生意気っ』
必死に言い返そうとするにも上手く言えなくて。
結果このような意味不明の言葉を言ってましたよ、あたし…。
…なにはともあれ楽しかったんだ。
あたしの頭にはもう小川さんの事なんかない。
「りんごあめみたいなほっぺだよー川上」
『ムカつく』
そう言った直後だった。
あたしの肩に誰かがぶつかり、手に持っていたりんごあめは地面に落ちた。
『ああーっ』
落ちたりんごあめはそのぶつかって来た誰かの影で黒っぽく見えた。
しゃがみこんでりんごあめを見る。
まるで毒林檎…。
「ごっごめんなさいっ…」
慌てたように言うその声は透き通っていた。
ていうか聞いた事ある声。
視界に入っているのは赤に近いピンク色の浴衣の裾。
その裾はいきなり消えて、下駄の足音が聞こえる。
その足音はいつかきいた上履きの足音にどこか似ていた。