ミステリアス∽ストーリー

今日から、この私立名門東郷学園が、愛梨の通う学校となる。

教室へ入り、愛梨は、担任教師に促され、クラスの生徒達の前に立つ。

生徒達は、初対面の愛梨を、一斉に無表情で見つめた。

一斉に見据える視線。

愛梨は、一斉に自分に注がれる視線に、おぞましさを感じた。

沈黙の長い時間を感じ、愛梨は、担任教師にそっと目を移し、様子を伺った。

担任教師は、教壇から、無言のまま、生徒達を見ている。

その横顔は、なんとも言い表し難いほどに冷たく………

今までに味わったことのない、教室内の異様に思えるほどの空気を感じながら、愛梨は、生徒達の前に立っていた。


「…まずは、皆さん一斉の朝の御挨拶からです」

担任教師は、低い声のトーンで口を開いた。
聞きやすいゆっくりと落ち着いた口調ながら、その表情は、呆れているといった表情だった。

「申し訳ございません！」

直ぐ様、一人の女子生徒が言った。

声が、先程の号令の声と同じだったので、愛梨は、声の主が彼女だったことを知る。

彼女が、担任教師に謝ると、クラスの生徒全員は、急いで深く頭を下げた。

血相を変えて頭を下げる生徒達を見て、愛梨は、異様さを感じた。


「おはようございます！」

生徒達が、一斉に声を揃えて教師に挨拶をする。

担任教師の挨拶の言葉を聞くと、先程の女子生徒の号令とともに、生徒達は、一斉に着席した。


「公立の高校から編入していらした、神崎愛梨さんです」

担任教師は生徒達にそう言うと、静かな口調で、愛梨に挨拶の言葉を言うように告げた。

「…、神崎愛梨です。どうぞ、宜しくお願いします」

愛梨は、挨拶をすると、一礼をした。

何の声も音も耳に入ってこない。

愛梨は、一礼を終え、顔を上げた。

無言のまま、表情ひとつ変えず、ただ見つめる生徒達。

顔を上げた愛梨の目に飛び込んできたのは、全く関心がないとも取れる、一斉に冷たい視線だった。


【な、何なの………】

愛梨は、思わず、後退りしてしまいそうだった。

そんな愛梨の心情をよそに、担任教師は、愛梨に席に着く様に促しながら、その席を探す様に、教室を見渡す。

すると、一人の女子生徒が、挙手をして起立をした。