Rainy-Rainy
「これでよかったか?」

「ん、ありがと。百円だよね?」


財布から銀貨を一枚取り出すが、桂くんは頬を緩め、首を横に振った。


「必要ない」

「でも……」

「今日は奢らせろ」

「う、うん」


渋々、出したお金を引っ込める。

それから、ありがとうとだけ伝えて、まだ温かい焼きそばパンを受け取った。


気を使われた…かな。

うん、多分そうなんだよね。

腕とか足の怪我を皆にじろじろ見られて、私、傍から見ても疲れてただろうから。


「え、えっと……屋上に行こっか。千鶴も待ってるだろうし」

「あぁ」


何となく空気が気まずくなりかけたので、そうなる前にたまり場にしている屋上へと向かうことにする。


ま、たまり場にしてるっていっても、私達が勝手にそうしているだけ。

本来は危ないから立入禁止になっているんだけど、千鶴がどこからか鍵をくすねて来たのだ。

滅多に人が来る事のない場所だから、騒がしい昼食時には、静かで落ち着ける有り難い場所だ。


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