Rainy-Rainy
「ふーっ。でも、電話繋がらんかったから、しゃあなし桂に頼んだんや」


千鶴は、頬を掻きながら煙草の紫煙を吐き出す。

千鶴から電話…?

あぁ…確か、昨日の夜鳴ってた気がする。

でも、それどころじゃなかったし…。


「ごめん、取れなくて。気付いてはいたんだけど、ほら…」


「千鶴、補習は決まりそうなのか?」


昨日は…と言いかけた時、桂くんが強引に話題を変えた。

それが何を意図するか。

私達にも分かっている。


「あっ!そ…そやな、ぎりぎりちゃうかなー」


千鶴も動揺をもろに出しながらも、彼に合わせる。

はは…と渇いた笑いを浮かべる頬が、微妙に引き攣っていた。



私達三人には、出来るだけ触れないようにしている話題が二つある。


一つは、二年前の事。

そして、もう一つが私と晶人さんの事。


三人共分かっているのだから、触れないで置くのも、今の様にあからさまに話を逸らすのも、正直意味なんて無い。

それでも、私達はその話になると途端に口を閉ざすのである。

決まり事があるわけじゃない。

罰がある訳でもない。

ただ、その話になると、心が酷く軋みを上げる。

だから私達は、仮そめの笑顔でその話題を避けるのだ。


自分達の罪から目を背ける為に……。





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