Rainy-Rainy
これが父親なのだろうか、と私はその人を見上げた。

優しい微笑みに、視線が合う。

そうしたらボッと、頬が赤くなったのが分かった。


「あらあら、この子照れちゃってる」


楽しそうにお母さんは、笑顔を男の人に向けていた。

けれど、私はそれどころじゃなかったんだ。

なんだか、自分でもおかしい位に胸がドキドキしていたから。


「ほら静香、お父さんにちゃんと挨拶なさい」


お母さんに急かされ、私はドギマギしながら、ちょこんと頭を下げた。


「う…うん。く、久我静香です。よろしく…お願いします」

「よろしくね、静香ちゃん。僕は上条……ううん、今日から久我晶人だよ」


晶人…さんって言うんだ。

そう、彼の名前を口の中で呟いたら、胸の鼓動が一際強くなった気がした。


「静香ちゃん……?」


私の名前を呼ぶ、彼をそっと上目使いに見上げる。

でも、ダメだった。

恥ずかしくってすぐに目を逸らしてしまう。


この人が、お父さん…?

ううん。

何か、違う気がする。

きっと私はこの人の事を、そんな風には思えない。

私には、そんな確信があった。


別に嫌いな訳じゃない。

むしろ、もの凄く好感の持てる人だった。


だから、きっとこの胸に沸いた気持ちは……。


「あ……」


ふわりと、彼の手が私の頬に触れる。

暖かくて、大きな手に私は、目眩にも似た喜びを感じていた。


もう間違いない。

自分で否定するつもりもなかった。


私は、晶人さんに一目惚れをしたんだった。





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