Rainy-Rainy
大好きな人に愛されたい。

願いなんて、その程度の陳腐な物だった。



そんなものの為に、愚かな私は大切な人を死なせてしまった。

結果、私はあの人の気持ちを自身に向かせる事に成功した。


けれどその気持ちは愛ではなかった。

何故だろう。

何故かは、分からない。


あの人の面影を残す私なら、愛してくれると思ったのに。

愛した人は、私に憎悪を向け、私の中のあの人に縋るようになった。


酷い笑い話だ。

たくさんを犠牲にして私が手に入れたものは、その人の体だけだったのだから。

本当に欲しい物は、自分の手で粉々に壊してしまったのだ。


嗚呼、なんて惨めな私。


でも。


愚かだからこそ、私はその事に気付く事が出来た。

体だけでも愛してもらえるなら、それは幸せな事なんだって。



私は、そうやって自分を騙して生きている。



< 3 / 107 >

この作品をシェア

pagetop