Rainy-Rainy
「俺に聞くな」


桂は、根から滴り落ちる雫を見上げ、ボソリと呟いた。


桂にも分からないのだ。

静香の為に、何をしてやればいいのか。

何が出来るのか。


彼女が、自分達の助けを良く思っていないのは何となく分かっている。

だが、情けなさい事に、他に何も思い浮かばないのだ。


だから、迷惑がられても、それでも過剰なまでに気を使うしか無いのだ。


それが、桂達に出来る数少ない贖罪だから。


「……雨、止まへんな」


千鶴がポツリと呟く。


「まだ暫くは降り続けるだろうな」


二人は揃って、激しい雨に泣く空を見上げた。

きっと嫌な色をしているのだろうが、それは暗くて見えなかった。


「はぁ……寒いわ」


千鶴はその場に膝を抱えて蹲り、そしてぎゅっと桂のズボンの裾を握った。

普段なら欝陶しいはずのそれを、桂は何故だか振り払う気にはなれなかった。



雨は止みそうに無い。

二人は濡れて帰る決心も付かず、ただ雨が早く止む事を望むのだった。


†††††
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