Rainy-Rainy



−Shizuka−



千鶴からの電話を切ってから十分程して。

ドサッと何か大きな音をさせて、晶人さんが帰って来た。


「おかえりなさい」


私は用意していたタオルを掴んで、急いで玄関へと駆けた。

全身を雨に打たれた晶人さんが、ぐっしょりと濡れたスーツ姿で玄関に倒れ込んでいた。

長い髪から、ポタリポタリと雫が伝って、床に染みを作っている。


「うぅっ……ん」

「…っ」


漂ってくる強烈なアルコールの臭いに、思わずむせ返る。

うわ……これは相当飲んでるなぁ。


って、そんな事はいい。

さっさと拭いてあげなきゃ、このままじゃ風邪を引いてしまう。


「晶人さん、風邪引きますよ!タオルで拭きますから、体を起こして下さい」


晶人さんの体の下に、私の体を潜り込ませるようにして、彼を持ち上げる。

じわりと、濡れたスーツから私の服に雨が染み込んでくる。


「ほら、晶人さん、しっかりしてくださっ…」

「煩いなっ!」

「きゃっ!?」


突然突き飛ばされ、私は後ろに倒れ込んだ。

お尻をしたたかに打ち付け、私は小さく悲鳴を上げてしまう。


「っ……あ、晶人さん、待って下さい。先に…濡れた体を拭かないと……」


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