Rainy-Rainy
私は、逃げるように晶人さんの部屋を飛び出した。

それから、扉にもたれ掛かるようにして、ズルズルとへたりこむ。


「……はぁ〜」


ロマンチックのカケラもない、お腹の音が恨めしい。

でも、晶人さんが寝ててくれて良かった。

ベッドでお腹の虫が鳴く子なんて、絶対嫌われてしまうもの。


いや、もう既に嫌われてるけど…。


「はぁ。……あ」


溜息を漏らす私の目の前に、白い眼帯が落ちていた。

蹴られた時に外れて、そのまま忘れていた。


痛む体を我慢して、それを拾い、軽く埃を叩いてから、視力の無い右目を覆い隠した。

これで、私は完璧に静香−ワタシ−に戻る。


けど、さすがに二年も使っていると、本当にしっくりと体に馴染むものだ。

きっと、桂くんの眼鏡と同じで、もう体の一部になってる、みたいな感か…。


ぐーっ。


そんなことをぼんやり考えている間も、私のおバカなお腹は空腹を訴えて……。


「……はぁ」


仕方なく腰を上げて自室へと、着替えに戻ることにした。

ちょっとそこのコンビニまで行って、お弁当を買ってくるとしよう。


多分、これ以上お腹が鳴ったら、本当に自分が惨めで仕方なくなってしまうから。



< 38 / 107 >

この作品をシェア

pagetop