Rainy-Rainy
「悪ィ。俺、カンペキ不審者だよな。名乗っとかねぇと。俺は、渡会恭輔だ」


恭輔さん?

渡会恭輔さんね。

うん、覚えた。


「先生には高校の三年間、世話になったんだ。ホント手を焼かせてばかりで、いい生徒じゃなかったが…」

「は、はぁ」


って事は、私の先輩になるのか。

お母さんは咲芽高校にしか勤めてないから、必然的に私の先輩という事になる。


「いや、びっくりしたなぁ。本当にそっくりだから、一瞬マジで先生がいるのかと思っちまったよ」


恭輔さんは喜々として話を続ける。

けど、その隣で私は愛想笑いを作っていた。

お母さんに本当にそっくりって言われるのは、慣れてるんだけど…。


やっぱり家族似てるって言われるの、ちょっと気恥ずかしいのよね。


と、恭輔さんの目元が私の顔のある一点で止まった。


「……ん、静香、その頬どうしたんだ?」


恭輔さんは喋るのを止めて、私の頬を人差し指で指した。

……いきなり呼び捨てですか。


いや、それよりも。

……しまった。


普段は濃い目の化粧でごまかすんだけど、今はちょっとコンビニに行くだけだからと何もして来なかった。

そりゃあ、話してる人は気になるよね。

それに恭輔さんは私の状況を知らないんだし。



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