Rainy-Rainy
あーあ、また千鶴がうるさいだろうな。

私を思ってくれるのは嬉しいけど、ちょっとばかりあの親友は心配が過ぎる。

芯まで疲れた体に、あの小言は響く。


全く、やれやれだ。


「よい……しょっ、と」


いつまでも寝ている訳にもいかず、やっとの事で体を起こして、足を引きずるようにして部屋から出る。


薄暗い廊下に出ると、すぐ目の前にドアがある。

そこにはローマ字で『AKITO』と書かれた札が掛かっていて、私のたった一人きりの家族が住んでいる。

ここは、晶人さんの部屋。

彼は、まだ眠っているのだろう。

そっと耳を近づけると、安らかな寝息が聞こえて来た。

ほっと胸を撫で下ろして、また足を引きずるようにして風呂場へと向かった。



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