Rainy-Rainy
『卒業おめでとうございます、渡会くん』
『先生……今までありがとう。ホントに感謝してるよ。卒業出来たのも、大学に入れたのも、先生がいてくれたからだ』
『その通りですね』
『…いや、だから』
『ふふっ、冗談です。ぜーんぶ、あなたが頑張ったからですよ』
『……先生』
『渡会くん、私の役目はここまでです』
『そうだな』
『今までありがとう。渡会くんのおかげで、退屈しない毎日でしたよ』
『そうなのか?』
『えぇ。本当に、教師になって良かったと心から思える日々でした』
『…………なぁ、先生』
『何ですか、渡会くん?』
『あのさ、俺、卒業したくないかも』
『クスクス、そんな事言わないで下さい。何の為に頑張って来たんですか』
『そうだったんだけど………でも俺…いつの間にか先生といるのが当たり前になってたから』
『寂しいんですか?』
『……そうかも』
『奇遇ですね。私も寂しいです。もう渡会くんで遊べないと思うと残念です』
『っ……あのさ、先生』
『はい?』
『俺さ……その先生の事』
『渡会くん?』
『……っ!いや、やっぱいいや。その、うん…また……今度にするよ』
『……いいんですか?聞くだけなら、聞いてあげてもいいですよ』
『え?』
『ただ私には、あなたの望む答えをさし上げる事は出来ませんが……』
『…っはは、先生、やっぱキツイ性格してるよ。でも、そんな所に………憧れてたよ』
『……ありがとう、渡会くん。あなたと出会えて、良かったです』