Rainy-Rainy






『卒業おめでとうございます、渡会くん』


『先生……今までありがとう。ホントに感謝してるよ。卒業出来たのも、大学に入れたのも、先生がいてくれたからだ』


『その通りですね』


『…いや、だから』


『ふふっ、冗談です。ぜーんぶ、あなたが頑張ったからですよ』


『……先生』


『渡会くん、私の役目はここまでです』


『そうだな』


『今までありがとう。渡会くんのおかげで、退屈しない毎日でしたよ』


『そうなのか?』


『えぇ。本当に、教師になって良かったと心から思える日々でした』


『…………なぁ、先生』


『何ですか、渡会くん?』


『あのさ、俺、卒業したくないかも』


『クスクス、そんな事言わないで下さい。何の為に頑張って来たんですか』


『そうだったんだけど………でも俺…いつの間にか先生といるのが当たり前になってたから』


『寂しいんですか?』


『……そうかも』


『奇遇ですね。私も寂しいです。もう渡会くんで遊べないと思うと残念です』


『っ……あのさ、先生』


『はい?』


『俺さ……その先生の事』


『渡会くん?』


『……っ!いや、やっぱいいや。その、うん…また……今度にするよ』


『……いいんですか?聞くだけなら、聞いてあげてもいいですよ』


『え?』


『ただ私には、あなたの望む答えをさし上げる事は出来ませんが……』


『…っはは、先生、やっぱキツイ性格してるよ。でも、そんな所に………憧れてたよ』


『……ありがとう、渡会くん。あなたと出会えて、良かったです』







< 51 / 107 >

この作品をシェア

pagetop