Rainy-Rainy
うぇえ…靴がまだ濡れてる。

中が、グジュグジュしてて気持ち悪い。

あーあ、帰ったら予備の靴下ろさなきゃ。


なんて事を考えながら、爪先をトントンと鳴らして、玄関のドアを開く。


そして、


「「あ…」」


…バタン。

開いた扉を、そのまま巻き戻し再生のように閉めた。


「な、何だ?忘れ物か?」


部屋から出て来た恭輔さんは、私のおかしな様子に、眉を潜めた。


「あ、いや……ひぃっ!? 」


ドンドンドンドンッ!


扉を思いっきり叩く音に、思わず不様な悲鳴を上げてしまう。


「お、おいおい、一体何なんだよ」

「いやぁ、そのぉ…」


何と説明したものやら。

まさか、いきなり扉を開けたら…


「ちょっと、静香やろ!何で、引っ込むんよ!?」


や、やっぱり見間違いでは無かったか。


千鶴がいるなんて。


「あん、この声?千鶴じゃないか。お前ら、知り合いか?」


ドンドンドンドンッ!


「え?恭輔さんこそ、千鶴の事を知ってるんですか?」


驚く私に、恭輔さんは指で上を指した。


ドンドンドンドンッ!


「この上の階が、あいつの家だからな……って、いい加減にしろ、千鶴!」

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