Rainy-Rainy
「とにかく静香をこっちへ渡さんかい!」

「おっ…おい、千鶴!?」

「わっ…」


千鶴は、恭輔さんの後ろにいた私を無理矢理引き寄せて、腕の中へおさめた。

ぎゅっと、強く抱かれる。

それから、一拍腕の中に私を感じてから、ギロっと恭輔さんを睨んだ。


「どういう事か説明してもらおか、恭兄。静香に何したんや?」

「んぁ?まさか、俺が静香に手ェ出したとでも言いたいのか?」


恭輔さんは呆れ顔で、首を左右に振る。


「ねぇよ」

「ざけんな!朝、男の部屋から女が出て来たら、普通他に無いやろ!」


怒り心頭の千鶴は、キス出来る位まで恭輔さんに詰め寄る。

恭輔さんは、そんな千鶴のおデコに人差し指を押し付け、トン、と後ろに押す。


「下らない事言うなよ。俺は、倒れたこいつを介抱してやっただけだ」


一瞬時間が止まった。


「え………倒、れた?静香?」


あぁ…地雷踏んだよ。

恭輔さん、あなたは見事に、私の足元に地雷を放り込んでくれました。


「倒れたって、どういう事?」

「えっと、軽い貧血…かな、あは」

「貧血って……そんな!静香、大丈夫言うてたやん。いや、とととととにかく、まずはお医者さん行こ?な?」

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