Rainy-Rainy
「あいつ、何で体中に……その、痣があるんだ?それにあの眼帯も…」


遊里が見たって体の痣。

それに、汚れた眼帯でも付けようとする執着。


何となく、普通じゃない気がする。


「ふーっ。聞くんやったら、その事やんなぁ」


千鶴は、揺らめく煙を見つめ、何やら考え込んでいる。

話すとは言っても、おいそれとは言えない事なのか。


「疲れて倒れるまで、何してんだ?」

「……うん」


赤熱する煙草の先から、ポロリと床に灰が落ちる。

千鶴は謝りながら、拾おうとするが、ボロボロと崩れて、指先を黒く汚してしまった。


「正直、勝手に言うてええ事ちゃうんやけど」


目を閉じ、溜息とともに呟く。

揺らぐ瞳を見られたくなかったのだろう。


「静香の痣な、父親にやられたんや」

「それって、DV…か?」


千鶴は、下唇を噛んで頷く。


「酷いのか?」


聞くまでもない。

そうでなきゃ、あの千鶴がこんな顔をする訳がないじゃないか…。





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