Rainy-Rainy
「酷いなんてモンちゃう!あんなん親の、人間のやることやない。おかしい、晶人さんはおかしいんや。やのに、静香は……」


千鶴の目に、僅かに涙が滲んでいる。


久我晶人、俺の恋敵か。

恋敵、ってか先生の再婚相手だ。

ハナっから、負けてるんだよな。


けど、何でだ?

あのしたたかな先生が、娘に手を上げるようなロクでもない人間をパートナーに選ぶなんて馬鹿なことするだろうか。

大体、先生はそんな人間を毛嫌いしていたじゃないか。

だったら…。


「原因みたいなのは、あるのか?」


晶人さんが、そうなった原因。

それが無いと、納得出来ない。


ん、納得?

納得ってなんだ?

……わからない。


「根っこの原因は、ウチにも分からん。静香は何も言うてくれへんから。ただ……多分引き金引いたんは、ウチらなんやと思う」


そう言って、千鶴は前髪を掴んで俯いてしまった。


「お前らが?」

「あぁ…ウチと桂が悪いんや」


重苦しい告白の後、沈黙が、室内を支配する。

俯いたままの千鶴の、僅かに開いた唇から漏れる吐息が、震えている。


そうして僅かな時間が流れ、ようやく千鶴が口を開いた。



「二年前、ウチらが……静香の目を潰してもたからや……」




†††††

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