Rainy-Rainy
-Shizuka-
パチャ、パチャ。
雨上がりの帰り道を、桂くんが数歩後ろから着いてくる。
さて今日は、桂くんは何を読んでいるのかな?
振り返って、トテトテと桂くんの元へ戻って手元を覗き込む。
「あれ?」
「ん?」
「今日は漫画なんだね」
凄く難しい顔をして読んでいるから、どんなお堅い本なのかと思ったら、最近人気の少年漫画だった。
「桂くんが漫画なんて珍しいね」
「ん?ああ、珍しいな。漫画や雑誌はあまり読まない」
そう言えば、コレこの間学校で借りていたやつだ。
おもしろいから死ぬ前に読んどけって、千鶴に無理矢理貸し付けられたんだっけ。
「何が面白いのかよく分からない。アイツのセンスは駄目だな」
桂くんは首を傾げて、短く唸る。
高校生らしからぬ感覚の持ち主である桂くんには、少し子供っぽいのかもしれない。
そのまま漫画を閉じ、鞄に片付けてしまった。
「いらないと言ったんだが…」
桂くんは、くいっと眼鏡の位置を直す。
「あはは、千鶴は強引だよね」
断ったら、無理矢理鞄に捩込んでくるだろうな。