Rainy-Rainy
でも昔は、あんなんじゃなかったんだけどなぁ。

気が弱くて、引っ込み思案。

自分を出せなくて、悩みがあっても、内に抱え込むタイプだった。

いつも私と桂くんの後ろを、俯き加減に付いて来ていた。


「千鶴も変わったよね。昔は、まだ桂くんの方が口数多かったもん」

「泣いてばかりだったな」


気のせいか、桂くんの口元が笑っている気がした。

と、桂くんが突然足を止めた。

どうしたんだろうと、振り返る前に、桂くんがさらに言葉を続ける。


「けど、俺はお前も変わったと思うぞ」

「……私が?」


喉が引き攣る。

振り返るのが、ちょっと怖かった。


「笑わなくなったよ、お前」

「何、言ってるの」


手早くニコリと笑顔を貼付けて、振り向く。

今朝も練習したんだから、大丈夫。


見せ付けるように、とびっきり笑ってみせる。

なのに、

桂くんは、頷いてくれなかった。


「その笑い方は、嫌だ」

「酷い事言うね」


私が笑ってるのは、二人の心を煩わせないためなのに…。


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