Rainy-Rainy
「辛いなら頼ってくれても構わない」


真っ直ぐ見つめてくる。

その目が、痛い。


「辛くないよ。どうして辛いと思うの?」


心無しか、呟いた声が震えていた。


でも私は愛されすぎて幸せだから、辛いはずがない。


「何も頼る事なんてないよ」

「だったら笑ってくれ」


どうして?

桂くんは、そんなに私を否定するの?

どうして、桂くんはそんなに悲しそうな顔をするの?


「変だよ。今日の桂くん。いつもよりお喋りだ」

「すまない」


桂くんは言い訳もせず、ただ頭を下げた。


「けど、最近のお前は本当に疲れているように見えたんだ」


本当に、今日の桂くんはよく喋る。

中々、引き下がってくれない。


「何が言いたいの?私が笑えてないって言えばそれで満足?」

「それは……分からない」


そう言って、視線を逸らした桂くんに、何故だか無性に苛立ちを覚えた。


分からないって、何?

桂くんから、言い出した事じゃない。

頭のいい桂くんが分からないなんて、そんなはずない。

ただ、口に出来ないんだよね。

桂くんは、いつだって最後の一歩は踏み込まないから。


「今日の桂くんは嫌いだ」


私はそう吐き捨てて、桂くんを残して走り出した。



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