美女で野獣
美しいヒト
「キャァア―ッ!!」
朝になると、女の人達の叫び声で学校は包まれる。
その叫び声の中に男の人はいるが、決してその女の集団の中には入ろうとしない。
というか、入れない。
だから、ただ、ひっそりと、見つめている。
ボクは、その男の人たちの仲間じゃない。
興味がないって訳じゃないけれど、ボクなんかが見たって、どうなる訳でもないから。
ぁあ、入ってきた。
学校一の
美しいヒトが・・・
「紀奈様っ!!」
「桜橋様っ!!」
まるで、壊れた人形のように、みんなその言葉を発する。
その視線の先には、いかにも外国製の高そうな車―
から出てくるヒト。
「おはようございます、皆様。」
その微笑は、誰もが美しいと言うだろう。
だが、声は、いつだって変わらない。
何処か少しトゲがあるような声。
みんなは、その美しさ、近寄りがたさを花にたとえ、
薔薇姫と呼ぶこともある。
集団の中から、一人の女の子が出てきた。
「き…紀奈様っ!!お鞄をお持ちいたしましょうか?」
「ぃえ、結構です。ありがとうございます。」
「ぁ、ぃえっ!!すみません////」
女相手なのに、頬を真っ赤に染めたその子は、嬉しそうにもといた場所に戻っていった。
―カツッ
薔薇姫は、ボクの前の席に座った。
教室の外には、ギャラリーがわんさかといる。
こういう雰囲気は、あんまり好きじゃないな。
よく、このヒトは絶えていられるもんだと思う。
ガタガタッ
授業始まりのベルが鳴り、ギャラリーたちは自分のクラスに戻っていく。
「やっと静かになった。」
ボクは、ため息をつきながら、ぼそっと呟いた。
「ぁっ!!」
ボクのひじがあたり机の上から消しゴムが落ちてしまった。
落ちた先は、薔薇姫の椅子の下―