美女で野獣
「ぉい、ジイ。」
「なんでしょうか?」
ぇっ?!
いたんですかっ?!
2人きりじゃなかったんですかっ?!
「此処の長を呼べ。イルカは何円だ?」
「紀奈っ!!」
「なんだ?」
紀奈は、満面の笑みでボクを見つめた。
「隼人も食うか?今日の夕飯はイルカの刺身だぞ☆」
「やめましょう…。」
こんな笑顔で言われちゃどうにもできない…。
「な☆」
「ダーメッ!!」
ボクは紀奈の手をとり、水族館から抜けだした。
はぁ…。
「なんだ?隼人。」
「なんで…すぐ食べようとするんですか?!」
「旨そうだからだ。」
紀奈は、にっこりと微笑み、また水族館に戻ろうとする。
肉食動物…
野獣
「そりゃ、食べられるかもしれませんが…。水族館でそーゆーコトは言わない方がいいんじゃないですかね…。」
ほんと、紀奈は常識を知らな過ぎる。
イルカがおびえていたじゃないか…かわいそうに。
―むに
紀奈に、軽く頬をつままれた。
「いひゃ…」
「なんだ?お前。」
紀奈は、鬼の様な顔をして睨んでくる。
「私が食べたいから食べるんだ。旨そうだから食べるんだ。」
「…。」
「これ以上私に指図してみろ…。」
紀奈は、ボクの頬から手を離し、親指を下にし
「生きて帰れないと思え?」
グッと力を込めて手を下に振り下ろした。
ひぃい…
イルカよりボクの方が危険だ…。