美女で野獣
刺客
「聞いた?隣のクラスに転入生だってぇ!」
「聞いた聞いたぁ~!かっこぃいんだよね♪」
教室の中は、いつも以上に熱気がこもってて、暑苦しい。
キャーキャーという雑音も。
「朝っぱらからうるさいなぁ…。」
ボクは、小さなあくびをひとつつく。
「だっちゃねぇ。こんなにカッコいい俺がいるのにね☆」
「そこかよ。」
ナルシスト
孝太郎は、僕の机の上にどさっと座っている。
「今、古文の授業中なんですけど…。」
古文の担当の教師が孝太郎を睨みながら言い放つ。
「知ってますよ☆」
孝太郎は、ぱちんっとウィンクをしてまたボクの方に向きなおった。
「お前のクラス、隣だろ?帰んなって。」
「しょうがないっちゃね。」
孝太郎は机から飛び降り、ドアから出て行った。
「名前さぁ~神崎恵だよね?」
―カシャッ
「?」
「紀奈様…?」
教室が一瞬静まり返った。
ボクの前の席の紀奈が、シャープペンを机の下に落としたからだ。
「すみません。」
紀奈は、皆のほうを向いて軽く頭を下げた。
『ぃいえーっ!!』
みんなはそろって紀奈のほうを向いて礼をする。
紀奈は、くすっと微笑み、また席に戻った。
でも、ボクは見逃さなかった
紀奈の顔が真っ青になってるコト。
肩を震わせてるコト。
何があったんだ
紀奈…。