美女で野獣
「そこで手を上に挙げてー…ってバカッ!!」



「すみませぇん。」

最近のボクは、いつも怒られてばっかり…。
絶望感の塊だ。

だって
紀奈に勇気出して告白したのに勘違いされちゃったし

演技無経験なのにイキナリ大役任されちゃうし―…

紀奈と並ぼうだなんて無理だったんだ。


紀奈とボクは、本当に住む世界が違いすぎる。



ぴしっ
「ひっ!」
「アンタ…本気でやってるわけ?ふっざけんじゃないわよ!!」

紀奈が怒るのも十分すぎる程分かります…
だって
だって

ほんとにボクできないんです。
演技とゆーもの。


それに比べて…

紀奈も演技無経験なのに―


「ぁあ王子様…あなたのコトを愛するのはいけないコトなのですか?」

紀奈の涙のしずくがライトに当たってキラキラ光る宝石みたいに輝いてる

「あなたを殺すくらいなら死んだ方がつらくないです。」


「さよなら王子様、私の愛したヒト―…。」


『キャー!!』
『紀奈最高よ!迫真の演技!涙が綺麗で綺麗で…!!』



クラスの子達や、監督をしてる子が紀奈の周りに集まって口々に紀奈を褒めちぎる。


周りを圧倒する存在感
抜群の演技力…

やっぱり紀奈は天才だ―

「じゃー次、隼人!紀奈様がこんなにすばらしい演技を見せてくれたんだから、あなたも最高の演技を見せなさいよ!」

プレッシャーかけるな!
「隼人、がんばれよ☆」

紀奈が応援してくれるのはすっごく嬉しいんですが…

「はじめ!」


「ツキヲミレバあノトきのニンギョがマブタノウラニウツル。」



「や…やる気あんの?」
監督が睨みながらボクに詰め寄る。

「ありますーありますー!!」

なんで、此処まで棒読みになっちゃうんだ?

ぁあ…影でこそこそ言われてるよ…。
だってできないんだもんー!!



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