美女で野獣

「誰にいじめられてるんだッちゃ?」

イキナリ―――っ?!


「…」

案の定紗亜夜さんは屋上の鉄の棒に体重をかけ、上の空。

「ユウキだしてっちゃ」
「…」

「教えてっちゃ?」
孝太郎がそっと近づく


「ぅう…」
紗亜夜さんが声を押し殺して泣きはじめた

「ぁうおぉえ?!」
女の子の涙に慣れていないボクは何をしていいかわからずただただうろたえる


「言えたらどんなに楽か…
弱くてすみません。
ぅぐ、ひっく」


「っ!!」
「わるかったっちゃ」
孝太郎はそっと紗亜夜さんを自分の胸の中に包み込んだ


「ただ、紗亜夜には普通の高校生活をしてもらいたいっちゃ
このままで紗亜夜はいいのか?」


なめらかな、赤子をあやすような優しい孝太郎の声


「人生に1度しかない高校生活だから…大切にしなきゃ」


どんっ
「あなたたちに何が分かるって言うんですか!?」


紗亜夜さんはありったけの力で孝太郎の胸をおす


「私の気持ちなんて、わかるわけない!!」
強い意志をもった瞳
長いまつげから涙のしずくがぽたりぽたりと落ちていく

孝太郎の学生服に紗亜夜さんの涙がしみ込んでいく

ボクは急いで孝太郎を抱き起こす


「私だってわからない!
もぅ…


我慢するしかないでしょう?」

独り言のようにコトバが口から1つ1つ零れ落ちる

「貴方達にまで迷惑をかけたくないんです。
私と、かかわらないほうがいいですよ」

紗亜夜さんは涙を拭うと
精一杯の笑顔をボク達にむけた



「でわ」



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